久々の教育スタートアップ系のイベントでした。
「EdTechベンチャー×既存教育大手の協業は成功するのか!? ~EdTech系のこれからの勝ちパターンはこれだ~」(2013.11.13)
「EdTech」とは「Education」と「Technology」を合わせた造語で、教育とIT技術の融合による新しいイノベーションを目指す、北米を中心とした教育ムーブメントを呼ぶようです。
「Khan Academy」をはじめとする Webサービスを想像すれば分かりやすいですよね。あるいは、「新しいオンライン教育」と読み替えてもいいでしょうか。鈴木規文氏によると、「EdTech」は「オンラインという利点を生かして低コストでリソースを調達できることが特徴」とのことでした。
有料のイベントでしたが、今回参加したのは、刺激をもらいたいということのほかに、
- どんな教育ビジネスが伸びるのか?
- スマートデバイスを用いたオンライン教育における、差別化要因や成功要因(KSF)は?
のようなところを知りたかったというのがありました。
ということで、いつものように(ほぼ自分向けに)メモを残しておきます。
既存教育大手や英会話スクールとの提携? - リアルスクールとオンライン学習の素敵な組み合わせ -
宮地俊充氏(株式会社ベストティーチャー)
- Best Teacher (http://www.best-teacher-inc.com) を運営
- 「教育って儲からないよね」特にアメリカのやり方(MOOCsとか?)を持ってくると
- (英会話市場はあまり伸びてないが)オンライン英会話は右肩上がり
- でも、オンライン英会話の売上げは全体(5000億円市場)の1%か2%。騒がれてるほどではない
- リアルスクールのメリットは「強制力」。時間と場所を固定
- 人間って弱いよね。。
- オンラインのメリットは「利便性」。モチベーションの高いユーザは嬉しい
- でも、利便性が高くても、モチベーションの低いひとはやらない
- そこで、両方を活かすモデルとして、週一通学+週6オンライン(来春予定)
- Best Teacherの結論「英語は丸暗記だ!」
- Best Teacherは丸暗記したいトークスクリプトを作成するサービス
- 英語を添削してもらう or 日本語を翻訳してもらう
- Skypeで先生の予約も可能
- 一方、留学は成功体験のサイクルが速い
edtechサービスのBtoC提供とBtoB提供のシナジー - 教材投稿型サービスShareWisにおける具体例 -
辻川友紀氏(株式会社シェアウィズ)
- 教育はすぐに儲からない
- ShareWis (http://share-wis.com)
- 社会人向け学習サービス。気軽に短いコンテンツをゲーム感覚で学べるように
- インプットとアウトプットがワンセット
- YouTube、slideshare、ブログ等の既存コンテンツも活用
- ユーザ投稿も可能
- ゆるく勉強したい人をターゲットに、本格的に勉強しようとする人から収益を
- レクチャー完了したら認定証を発行する、等(形に残したい人が意外と多い?)
- 何か学びたいけどできてない人が約70%?
- B-to-Bとして、企業と提携も
- コンテンツはあるけど出してない企業(にウチで販売しましょうよと誘う)
- 学校・塾に学習システムを販売
- (B-to-Cをやることでの)B-to-Bへのメリット
- 一般大勢の人を満足するための工夫のノウハウ(B-to-Cのノウハウ活用)
- マーケティングツールとして使う(商材)
- (B-to-Bをやることでの)B-to-Cへのメリット
- ユーザへのリーチ(認知度)が上がる
- 企業の人からの密度の高い指摘・フィードバックが得られる
- でも、
- カスタマイズが大変(IE・・etc)
- B-to-Bのプロダクトにアジャイル開発が適用しにくい
- 今後、コンシューマ向けのサービスありきで、それを企業用に適用していくという流れが増えていくのでは
キッズベースキャンプを創業して2年で東京急行電鉄に事業売却するまでの物語
鈴木規文氏
- アナログ・オフライン事業(非EdTech)
- 「アフタースクール業界」(子育て支援事業)が盛り上がってきている
- 6年の間に他社が大量参入
- でも、本業とシナジーが取れてやっとのところが多いのが正直なところ(単体ではほぼ儲かってない)
- 小学校低学年にはまる
- 放課後プラットフォームを戦略にする
- 学習塾等のフランチャイザーのアップセルパッケージとしての「アフタースクール」
- でも儲けづらい。。「不合理」
- キッズベースキャンプのポジショニングとしては、「コンテンツホルダーとは競合せず、プラットフォームになろう」。コンテンツホルダーには勝てないから
- 儲けづらい構造は、需要と供給の交点で均衡価格が決まるが、4000〜5000円でやっているプレイヤーがいるので実質、規制価格が掛かっている
- 既存のコンテンツホルダ・教育プログラムが強力なので、軸をずらして勝負しないといけない
- プラットフォームを作っちゃうと、何か教えたくなっちゃう⇒教育プレイヤーとしてやっちゃダメ
- キッズベースキャンプは、安全安心な「預かりサービス」から始めた
- 戦略ストーリーの整合性(Suzuki Theory)
- 顧客プロファイル、顧客ニーズ、顧客の利益、本質的提供価値、提供可能な理由、の一気通貫が必要
- 結局、IPOとして断念。IPOモデルとしては相当困難ということが分かった(やっぱり教育事業はスケールアウトしにくい)
- 東急電鉄にバウアウト
パネルディスカッション
森安康雄氏(株式会社ベネッセコーポレーション)
宮地俊充氏(株式会社ベストティーチャー)
辻川友紀氏(株式会社シェアウィズ)
鈴木規文氏(01Booster)
モデレーター:合田ジョージ氏(01Booster)
Q. 教育事業のマネタイズは難しいのは実感しているが、爆発的に伸ばす施策は?ネット系だとその辺
- マンツーマンだと講師をすぐに(一次曲線的にしか)増やせないので(宮地)
- 利用者を増やすには、コンテンツを増やして利用者への接点を増やす(辻川)
- 客単価×客数でいうと、客単価は落ち続ける一方。グローバルを狙うのはいい(鈴木)
- エンドユーザから取らないモデルを組まざるを得ないかも。成功モデルはあまりない。Courseraの認証モデル?(鈴木)
- 携帯型学習機器(ポケットチャレンジ)が成立していた頃の常識は通用しなくなってる(コモディティ化してしまっている)(森安)
- どこでお金を取るかは各自発明していかないといけない。EdTechベンチャーであれば、ベネッセ(進研ゼミ)の顧客基盤を使って何かしていけばよい。EdTechで何ができるか?マッシュアップ、マッチング(森安)
- グローバルな市場で競争しないといけないので、スピード・クォリティが必須。クローズドでやってしまうとどうしても不利になるのでは。外の知恵を入れざるを得ない(森安)
Q. Best Teacherの個人・法人の割合は?
- 個人8割、法人2割。法人の方が人間味が出て楽しい(宮地)
Q. ShareWisのユーザ投稿コンテンツの質にたいしてはどう思う?
- 質は大事だが、きっかけ作りの方を重用視。究極的には「師弟関係」のシステムを取り込みたい(辻川)
- 「答えは間違っちゃいけない」という考え方は、事前チェックしてたら、こんなに早く・安くサービスを提供できない。何を取るか(森安)
- こういうサービスがピッタリなんだと思ってる人にやってもらえばよい。戦略として「保証はどうしてくれるんだ」という人を相手にしない(森安)
Q. モチベーションを上げさせる工夫は?
- マップを使った可視化はやってるが、そこまで工夫はしてない。全部クリアしたら何も無いので、ゲーミフィケーションやユーザ体験、ユーザ価値の実装はこれから
Q. 「公教育」のあり方を変えることについて
- 「公教育」方面に行くのは反対。市場で権益を取りに行くべき。行政の受託をすると利益は出るが、市場で勝負できなくなる(鈴木)
- 同じ反対。「公教育」は最も遅れたマーケット。EdTechはそれを突破していくものであるべき(森安)
- 意思決定をする判断をする人が、新しいものに触れて「Yes」となかなか言わない(森安)
Q. サービスの認知度を上げる方法は?
- コンテンツに至る経緯として、囲碁のコンテンツができたら、周りをうめていくようなコンテンツを作って外堀から埋める(辻川)
- 流行りに乗る。例えば、「スタートアップ」「EdTech」をPRに使った。一番始めに言うのがポイント(宮地)
- オリンピックを使う?(宮地)
Q. 学び・サービスを継続してもらうための仕掛け・仕組み・取り組んでいる要素は?
- 可視化が一つ。これをやったらどうなる、というのを垣間見せるとリテンションが上げられる(辻川)
- コンテンツが気軽にできること。ちょっとした待ち時間でもできる
- 継続性は習慣化。続いている人はリズムがある。固定することへのバランス(宮地)
- リテンション・会員を逃がさない仕掛けはビジネスの根幹をなす重要な部分。本当に大変なところ(森安)
- 紙のビジネスでは分かっているが、オンラインサービスでのリテンションについては全く分からない(森安)
- SNSやゲーミフィケーションを少し入れたものをたくさん同時に走らせて、状況を解析しているところ(森安)
- 学びは内発的動機が重要。「楽しい」が何より、という感覚を持っている(鈴木)
Q. EdTechなプレイヤーたちは、どこに光明を見いだせばよいか?
- 続けるのが大事。オンラインは必ず来る。勝手に光を浴びるはず(宮地)
- 教育産業が花咲くのは息が長い企業。50年60年かかる(宮地)
- EdTechのマーケットは将来大きくなる。でも、オフラインのマーケットをリプレースする、という勝負はしない。オンラインとオフラインは併存する。そこを繋げるところを目指していく(辻川)
Q. EdTechはどっち方面に行けば生き残れる?
- オフライン授業とオンライン授業は何が違うのか?在宅にいてもより価値が高いサービスを受けさせることができるのか?を考えたい。オンラインで学ぶということに、どこに付加価値を付けるか?(森安)
- 持っているところと一緒にやるのが一つ。どこで勝負するかを突き詰めるのが一つ(森安)
- 既存のプレイヤーは「4月に始まり3月に終わる」とのんびりしているが、実際は「すぐに知りたい」にスピード感が変わってる(森安)