年末ということで今年の読書歴を振り返ってみたのですが、2016年は、雑誌やマンガ、技術系の本を除いて11冊の本を読んでいました。
今年はなるべく、流行りの本よりも多くの人に読まれている古典系の本を読みたいと考えていたのですが、本を読むのが本当に遅いので月にほぼ一冊ペースになってしまいました。来年はもう少しペースを上げて読んでいきたいと思います。
ビジネス系
1.ビジョナリー・カンパニー
オススメ度:★★★★★
今年のはじめに「リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす」に続けて読んだ本。 「リーン・スタートアップ」がスタートアップ(*1)が成功するためのビジネス開発手法を説く本であるのに対して、「ビジョナリー・カンパニー」は時代を超えて繁栄する偉大な企業の「真理」を描き出した、1995年発刊の経営書です。
原題は「Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies」で、永遠に続く企業の秘訣、という意味でしょうか。この本の一番の特徴は、厳しい条件から選び出した18社の偉大なトップ企業とそのライバル企業(前者を金メダリストとすると銀・銅メダリストクラス)を比較して、ビジョナリー・カンパニーをビジョナリー・カンパニーたらしめている要素をあぶり出すというその分析手法にあります。なお、紹介されている 36社のうち日本企業はソニーくらいで、あまり馴染みのない企業ばかりという印象が否めませんでした。
本書を貫く主題として、ビジョナリー・カンパニーの「ビジョン」は、
ビジョン=基本理念(長期に渡って維持される基本理念)+進歩(将来の理想に向けた進歩)
であり、基本理念を熱心に維持すると同時に、進歩を促すための具体的でしっかりした仕組みを持った組織をつくることが、ビジョナリー・カンパニーの基本とされています。またここで、基本理念は「我々が何者で、何のために存在し、何をやっているのかを示すもの」であり、
基本理念=基本的価値観(組織にとって不可欠で不変の主義)+目的(単なるカネ儲けを超えた会社の根本的な存在理由)
と書かれています。
なお、進歩については、ビジョナリー・カンパニーは組織に活力をみなぎらせるためにきわめて大胆で興奮を呼び起こす「BHAG(ビーハグ:社運を賭けた大胆な目標)」を掲げる傾向があるとし、さらに BHAG に続く第二の種類の進歩として「進化による進歩(枝分かれと剪定)」を積極的に促すとしています。
最後に、本書から気になった一節を抜粋。
ビジョナリー・カンパニーの創業者はどこまでも粘り抜き、「絶対に、絶対に、絶対にあきらめない」を座右の銘としている。しかし、何を粘り抜くのか。答えは会社である。アイデアはあきらめたり、変えたり、発展させることはあるが、会社は絶対にあきらめない。会社の成功とは、あるアイデアの成功だと考える起業家や経営幹部が多いが、(中略)善し悪しは別にして、ひとつのアイデアにこだわることなく、長く続くすばらしい組織をつくり上げることを目指して、粘り抜くことができる。
後に述べる「GRIT」にも繋がっている話で、非常に興味深い一節だと思いました。
2.ビジョナリー・カンパニー2
オススメ度:★★★★★
原題「Good to Great: Why Some Companies Make the Leap...And Others Don't」(良好から偉大へ)が示す通り、偉大な企業へ飛躍を遂げた企業の転換点に着目して分析し、前著「ビジョナリー・カンパニー」では取り上げられなかった「どうすれば偉大な企業になれるのか」「良好な企業から抜け出せない病を治療するにはどうすればよいのか」といったテーマを取り上げた、2001年発刊のベストセラー経営書です。
「ビジョナリー・カンパニー」シリーズは、2010年発刊の三作目「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」までが特に有名ですが(*2)、三作目は衰退した企業の特徴がテーマということで、まずは成功の秘訣を知りたいという経営者や起業家の興味から外れてしまい、一作目と二作目だけを読むという人も多いようです。あと、本の内容から二作目を読んでから一作目を読む方がよいと言う人も中にはいるようですが、私はそのまま一作目を読んでから二作目を読むというので全然問題ないと思いました。
内容をひと言で言えば、良い組織を偉大な実績を持続できる組織に変える法則として、
第五水準の指導者がいて、適切な人をバスに乗せ、厳しい現実を直視する規律を持ち、真実に耳を傾ける社風を作り出し、評議会を作って三つの円が重なる部分で活動し、すべての決定を単純明快な針鼠の概念に従って下し、虚勢ではなく現実の理解に基づいて行動すればよい。
と書かれています。
「ビジョナリー・カンパニー」シリーズを通して言えますが、独特な比喩や言い回しやあって、実際に本を読んでいない人には全然ピンと来ません。逆に、一度理解してしまえば長期間記憶が定着するのでしょう。
私が一番好きなフレーズは、針鼠の概念(本質を見極めて単純化した概念)で、
- 自社が世界一になれるもの
- 経済的原動力になるもの
- 情熱を持って取り組めるもの
の交点を徹底的に見極め、それに矛盾しない社運を賭けた大胆な目標(BHAG)を立ち上げ、そこに向かっていくことがビジョナリー・カンパニーへの道だということです。
そのほか全体を通して、規律の文化(規律のある人材・規律のある考え・規律のある行動)をいかに作り上げるか、が組織にとって非常に重要とのことです。
最後に、「ストックデールの逆説」と著者が呼んでいる一節があるのですが、
どれほどの困難にぶつかっても、最後には必ず勝つという確信を失ってはならない。そして同時にそれがどんなものであれ、自分が置かれている現実の中でもっとも厳しい事実を直視しなければならない。
これも GRIT に通じる考え方なのかな、と思いました。
3.ゼロ・トゥ・ワン
オススメ度:★★★★★
PayPal 創業者で、最近ではドナルド・トランプの政権移行チームのメンバーにもなったという起業家で投資家の ピーター・ティール の本です。ビジョナリー・カンパニー1・2の二冊とまとめて一気読みしました。
著者のピーター・ティールは採用面接で「賛成する人がほとんどいない、大切な真実とは何か?」と必ず訊くと言います。その理由は、本当に社会のためになる新しいものを生み出す(ゼロから1を生み出す)ためにはこれまでと「違う」ものに着目しなければならず、それが新たな市場の独占を可能にし、企業に利益をもたらすからだと説きます。
要するに「常識を疑え」ということなのですが、未来はどうなるか分からないという「常識」さえも疑ってしまえ、というのが彼の考え方です。
2014年発刊のこの本は、2000年4月に崩壊したドットコム・バブルの反省から生まれた「リーン」(計画せずに製品を柔軟に改良するという開発手法)の考え方は現代のスタートアップビジネスには合わないとし、そのアンチパターンとして、
- 大胆に賭ける
- 成功を実現するための計画をする(出来が悪くても無いよりはマシ)
- 競争せず独占する
- 製品だけでなく販売にも力を入れる
を良しとしています。
また最後に、優れたビジネスプランは、次の七つの質問にしっかりと答えを出すことが求められると書いています。
- エンジニアリング(ブレイクスルーとなる技術を開発できるか?)
- タイミング(今がこのビジネスを始めるのに適切なタイミングか?)
- 独占(大きなシェアが取れるような小さな市場から始めているか?)
- 人材(正しいチーム作りができているか?)
- 販売(プロダクトを届ける方法があるか?)
- 永続性(この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?)
- 隠れた真実(他社が気付いていない独自のチャンスを見つけているか?)
「ビジョナリー・カンパニー」「リーン・スタートアップ」を読んで、この「ゼロ・トゥ・ワン」までを一気に読むと、主張の違いや同じ考え方の部分が明確になって非常に面白かったです。
4.フリー
オススメ度:★★★☆☆
フリー(無料)経済を事例を交えて丁寧に解き明かした本。年末に読んだのですが、想像以上にボリュームがあって読むのにすごく時間が掛かってしまいました。
著者の クリス・アンダーソン は、米「WIRED」紙の元編集長で、「ロングテール」の名付け親として有名です。
まず、著者はフリー経済を以下の四つに大別しています。
- ① 直接的内部相互補助 ・・・フリーでない他のものでフリーを補填する
- ② 三者間市場 ・・・第三者がスポンサーとしてお金を払う
- ③ フリーミアム ・・・少数の有料利用者が無料利用者を支えるモデル
- ④ 非貨幣市場 ・・・評判や関心を動機とした贈与経済や無償の労働など
さらに、
潤沢な情報は無料になりたがる(逆に、稀少な情報は高価になりたがる)
という「フリーの万有引力」が働くため、低い限界費用で複製・伝達できる情報を扱う場合はこれまでとは違った新しいビジネスの仕組みを考える必要があり、例えばフリーによって得た評判や注目をどのように金銭に変えるかを創造的に考えなくてはならない、としています。
なおこの本自体も、出版された当初に期間限定でデジタル版が無料公開されていたそうです。
教養系
2016年の中旬は、教養とは何か?というのをふと考えていました。
5.ビジネスに効く最強の「読書」
オススメ度:★★★★★
著者の 出口治明 氏は、ライフネット生命の代表取締役会長兼CEOで、無類の読書家で旅行好きとしても知られています。ビジネス本も多数執筆していますが、何冊か教養についての本を出していてその中の一冊がこの本です。
本書では、教養については、
人間が賢くなる方法は、人に会い、本を読み、世界を旅すること以外にない
と書かれていて、読書については、
読書は知識を得るためではなく、自分の頭で考える材料を得るためにある
と書かれています。なるほど、「本の中に答えはない。本を材料にして自分自身で考えよ」ということでしょうか。読書で考え方の幅を広げる訓練をすることで教養が磨かれるということであれば、読書は「量」というよりも「質」が物を言うのかもしれません(もちろんある程度の量は必要という前提で)。
なお本書は、目次が
- Part 1:リーダーシップを磨くうえで役に立つ本
- Part 2:人間力を高めたいと思うあなたに相応しい本
- Part 3:仕事上の意思決定に悩んだ時に背中を押してくれる本
- Part 4:自分の頭で未来を予測する時にヒントになる本
- Part 5:複雑な現在をひもとくために不可欠な本
- Part 6:国家と政治を理解するために押さえるべき本
- Part 7:グローバリゼーションに対する理解を深めてくれる本
- Part 8:老いを実感したあなたが勇気づけられる本
- Part 9:生きることに迷った時に傍らに置く本
- Part 10:新たな人生に旅立つあなたに捧げる本
といった章立てになっていて目的別にカテゴリ分けされて本が紹介されているため、興味のあるところからどこからでも読み始めることもできます。
いろいろなジャンルから108冊の本が紹介されていますが、歴史書や小説が意外と多い印象を受けました。歴史書については、
様々な角度から「歴史」を知って、他人と自分の「今」を俯瞰的に眺め、さらに時間軸、空間軸から自分の立ち位置を読み取る。そうした感覚を研ぎ澄ませることは、ビジネスの世界を生きるうえでも大きな武器になるに違いありません。歴史は間違いなくビジネスに効くのです。
と言っています。なお、古典については、
ビジネスを進める上で本当に役立つ本は、圧倒的に古典に多いと思います。なぜなら、そこには様々な人間がリアルに描かれているからです。つまり、古典を読めば人間力(人間に対する観察力)が高まるのです。ビジネス書を10冊読むよりも、古典1冊を読んだ方がよほど役に立つ。
と考えており、「韓非子」「ブッデンブローク家の人びと」「王書」の三冊を紹介しています。
最後に、紹介されていた108冊から私が個人的に気になった本をいくつかピックアップ。
- 005「ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)」(塩野七生著)
- 007「採用基準」(伊賀泰代著)
- 009「君主論 (岩波文庫)」(マキアヴェッリ著)
- 018「白い城」(オルハン・パムク著)
- 019「脳には妙なクセがある (扶桑社BOOKS)」(池谷裕二著)
- 023「自分のアタマで考えよう――知識にだまされない思考の技術」(ちきりん著)
- 031「2052 今後40年のグローバル予測」(ヨルゲン・ランダース著)
- 033「第五の権力 Googleには見えている未来」(エリック・シュミット著)
- 040「気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年」(田家康著)
- 041「ヘロドトス 歴史 上 (岩波文庫)」(ヘロドトス著)
- 043「イタリア絵画史」(ロベルト・ロンギ著)
- 049「昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー 671)」(半藤一利著)
- 055「職業としての政治 (岩波文庫)」(マックス・ヴェーバー著)
- 082「生物学的文明論(新潮新書)」(本川達雄著)
- 086「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅 (講談社文庫)」(レイチェル・ジョイス著)
- 087「ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)」(中村元訳)
- 092「アラン 幸福論 (岩波文庫)」(アラン著)
- 093「ラッセル幸福論 (岩波文庫)」(B.ラッセル著)
- 094「ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)」(アリストテレス著)
- 105「インド日記―牛とコンピュータの国から」(小熊英二著)
6.おとなの教養
オススメ度:★★★☆☆
テレビでお馴染みの池上彰さんの本。
「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」という問いかけに答えるための真摯な取り組みが「リベラルアーツ」という古来からある学問であり、様々な偏見や束縛から逃れ、自由な発想や思考を展開していくことができる教養を学べるものとしています。
また教養とは、「進歩の速い世の中にあっても陳腐化しないスキル」であり、
すぐに役に立つことは、世の中に出て、すぐ役に立たなくなる。すぐには役に立たないことが、実は長い目で見ると、役に立つ。
ということが書かれています。「長い人生を生きていく上で、自分を支える基盤になるもの」というのが教養である、という考え方です。
先の「ビジネスに効く最強の「読書」」のように本の紹介をするというスタイルではなく、宗教、宇宙、人類の起源、免疫学、経済学、歴史、日本の起源などの各ジャンルごとに池上さんが分かりやすい説明をしていくというスタイルの本です。
7.孫子・戦略・クラウゼヴィッツ
オススメ度:★★★★☆
「孫子」と「戦争論」という二大戦略書を対比させながら分かりやすく解説した本。タイトルに惹かれて買ったのですが、たまたま今年の4月頃に gacco の「中国古典に見る指導者の条件」というオンライン講座を受講していたのですが、この本の著者である 守屋淳 氏が件のオンライン講座の講師をされていた 守屋洋 教授のご子息だったのはちょっとした偶然でした。
以前、会社の勉強会で「孫子 (戦略論大系)」を輪読していたことがあり孫子は少し囓っていたのですが、クラウゼヴィッツは初(と思ったら、マンガ版「戦争論 ─まんがで読破─」を読んだことがありました。面白くないのでオススメしませんが・・)。曰く、軍人目線、一対一で戦争を考えるクラウゼヴィッツに対して、政治家目線で複数のライバルを視野に入れる孫武ということで、経営者や起業家であれば孫子の兵法の方が合っているように感じました。しかしながら、政治家や君主によって開戦を決定づけられた後に表舞台に立たされるというクラウゼヴィッツの立場を考えると、プロジェクトマネージャーであれば戦争論の方がしっくり来るのかもしれません。
本書では「王道のクラウゼヴィッツ」に対して「詭道の孫子」とも書かれていますが、どちらの戦略書が勝っているかというよりは、両者の置かれた背景に大きな違いがあるため一概に優劣はつけられません。繰り返し同じ相手と戦うことがあり負けてもある程度やり直しが利くナポレオン時代のプロイセンと、周囲をライバルに囲まれ不敗が求められた戦国時代の呉ではあまりにも状況が違い過ぎます。またここで筆者が、戦争論が野球選手や囲碁・将棋の棋士たちの状況に当てはまるとして、落合博満氏の「勝負の方程式」や羽生善治氏の「決断力 (角川新書)」から考え方を引いているのが斬新でした。
なお教養については、筆者は、
教養とは、新たな視点、異なる立場の宝庫に他ならない
と言っています。
いろいろな視点や立場を比較して俯瞰することで、教養が磨かれていくのでしょう。
GRIT(グリット)系
8.やり抜く力
オススメ度:★★★★★
教育業界で話題になっている「GRIT(グリット)」(*3)の本。ひと言で言えば、「努力と才能のどちらが大事か?」というテーマについて書かれた本でしょうか。
著者は心理学者の アンジェラ・ダックワース 教授です。専門は心理学者ということですが、本の内容はデータ重視で説得力があります。この本を読んでから、TED の「アンジェラ・リー・ダックワース 『成功のカギは、やり抜く力』」を見ると、動画の内容がさらによく理解できます。
本書では、GRIT(やり抜く力)とは「情熱」+「粘り強さ」とされ、両者は一見似ていますが、
- 「情熱」・・・自分の最も重要な目標に対して興味を持ち続け、ひたむきに取り組むこと
- 「粘り強さ」・・・困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続けること
として明確に区別しています。またさらに情熱は、「興味」と「目的」に支えられているとしています。
才能がなくても一万時間練習を続ければその道のエキスパートになれるというマルコム・グラッドウェルが提唱する「一万時間の法則」というものがありますが、本書では、エキスパートたちはただ何千時間もの練習を積み重ねているだけではなく、「意図的な練習」(並外れた努力を要する極めて過酷な練習)をおこなっており、楽な練習はいくら続けても意味がないと言います。なるほど言われてみれば確かにそうで、単に惰性で続けていても得られるものは少ないですよね。小学校の頃に何年もスイミングスクールに通っていたのに、嫌々続けていたからか全然上手くならなかったつらい過去を思い出しました。。
また成功の秘訣は、「GRIT」に加えて「成長思考のマインドセット」としていて、子どもの頃の「褒められ方」が一生を左右するとも述べています(才能ではなく努力を褒める方がよい)。
以前に読んだ「「学力」の経済学」でも、具体的な努力を褒めた場合は子どもの成績が伸びたのに対して子どもの元々の能力を称賛した場合は成績が落ちたということが実験結果から実証されており、本書の主張とも合致します。
他にもいろいろな教訓や示唆があり、大変興味深かったです。教育関係の人は必読かも。
9.Think Simple
オススメ度:★★★☆☆
GRIT の本に続けて、スティーブ・ジョブズの本を読みました。
これまでスティーブ・ジョブズの本としては、「スティーブ・ジョブズ I」「スティーブ・ジョブズ II」「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」を読んできましたが、スティーブ・ジョブズの特徴を表す「現実歪曲フィールド」と双極をなす「シンプルの杖」(シンプルに対する熱狂的哲学)をフィーチャーした本です。
シンプルであることは、複雑であることよりも難しい。
物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければならないからだ。
だが、それだけの価値はある。
なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山をも動かせるからだ。
とスティーブ・ジョブズが言ったように、彼は不可能を疑い、逆境を逆境と思わず、自分が信じるものに対しては最後までやり抜くという「GRIT」を具備した人物であると感じました。
10.志高く 孫正義正伝
オススメ度:★★★☆☆
続けて、スティーブ・ジョブズとも交流があった、ソフトバンクグループ代表取締役社長の 孫正義 氏の半生を描いた伝記を読みました。生い立ちから少年時代、トタン屋根の会社で始めたソフトバンクを売上高9兆円の一大グループ企業まで育て上げた 2015年までの、地道な努力を惜しまず本質を見極めて素早く対処する「行動力」、人に喜んでもらえる仕事がしたいという「情熱」、志を絶対に成し遂げるという「意思」について、孫氏の類稀なる非凡なエピソードが描かれていました。
ここまで「やり抜く力」「Think Simple」「志高く 孫正義正伝」と続けて読んできて、この三冊が私の中で「GRIT」という点で繋がりました。
スティーブ・ジョブズと孫正義氏は両氏とも、青年時代の成功体験によって世界は変えられると信じた「成長思考」の持ち主であり、自分が信じるものに対しては最後までやり抜く「GRIT」の精神を兼ね備えた人物です。結果論かもしれませんが、GRIT と成功の繋がりを強く感じることができました。
その他
11.究極のセールスレター
オススメ度:★★★★☆
ライティングのコツを身につけるために、ライティングのレジェンドと言われる ダン・ケネディ の本を今年の半ばに読んでみました。具体的なライティングのコツについて書かれた、超実践的な本です。
2006年に出版された少し古い本で、元々はセールスレター向けに書かれたものですが、DM や SEO にも応用が効くと思います。
- セールス術とは技術であり、慣れである
- 買うのは感情(買ってから自分の選択を理屈で正当化する)
- 送り手の関心事ではなく、受け取り手の関心事に単刀直入に的を絞れ
- オファーの不利な点を認めて正直に伝えると、信頼できると評価してもらえる
- AIDA の法則
- 喜んで受け取ってもらうには、重要で、知る価値があって、ためになると思ってもらえることを伝えればよい
- 価格の件が曖昧になるような比較をする
- 問題を誇張し、まったくひどい災難だと思わせる
- 焦らせる、投資収益率を説明する、自尊心に訴える、しっかり保証する
- 見込み客がどんな反応をするかをしっかり理解する。疑問や反論の起こりそうなあらゆる可能性に用心深く対処する
- 買ってくれそうな人のために書く
- 何度でも言う。単刀直入に、例を挙げて、実話で、証言・証明で、お客・専門家・その他の代弁者の言葉で、番号を振った要約で
- 簡単に「うん」とうなづいてもらえるような質問を次々にすることで同意する癖をつけさせる
これらを思い浮かべながら深夜のテレビショッピングを見ていると、実際これらのテクニックを意識して作られているなぁと恐ろしいほど実感することができます。
*1:本書では「とてつもなく不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織」を指すとされる。ベンチャー企業とスタートアップの違いについては、ベンチャー企業とスタートアップの違い | freshtrax | デザイン会社 btrax ブログ も参照
*2:2012年発刊の第四弾「ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる」もあります。
*3:GRIT は、Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)の頭文字とされています。