「コンピュータの父」と言えばフォン・ノイマンというのが世間の通説となっていますが、現代コンピュータの基礎を築いた功績者としてノイマンと共に挙げられるのが、「チューリング・マシン」を提唱したアラン・チューリングです。
そもそもチューリングに興味を持ったのは、オンラインで受講していた脳科学者の茂木健一郎さんの講座の中で、
アラン・チューリングはイギリスが生んだ偉大な数学者の一人で、チューリング・マシンという現代のコンピュータの雛型のような機械を考案しました。チューリング・マシンというのは、プログラムに従ってメモリを読み取ったり書き込んだりすることによって様々な計算をするという概念なのですが、このチューリング・マシンが現在我々が使っているコンピュータの基本になっているのです。
チューリングが考えたことで非常に大事なものが「万能性(万能チューリングマシン)」という概念で、機械が1つあれば、プログラムを入れ換えればありとあらゆるものを計算することができるということを証明したわけです。これは大変重要な業績で、チューリングが二十世紀最大の天才の一人と言われる理由なのです。
「脳と創造性 | gacco」より
といった内容で、チューリングのことが出てきたからなのです。
その後、たまたま職場で、
- 作者: B・ジャック・コープランド,服部桂
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
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という本を貸していただいたことをきっかけに少し調べてみたら、チューリングの伝記を基にした映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」がちょうど公開していることが分かり、読むモチベーションがすごく上がったのでした。
2012年はチューリング生誕100周年ということで、伝記本が出版されるなどちょっとしたチューリング・ブームがあったそうで、その流れで、といった映画も製作され、アカデミー賞(脚色賞)まで獲ってしまったとのこと。
そして今日、新宿の某映画館で観てきたのですが、一番前の席しか空いていないほど超満員でビックリ!! そんなに注目の映画でしたっけ!?
映画の内容としては、チューリングのことをあまりよく知らない人のためなのか、細かい出来事をうまく端折った感じの構成になっていました。例えば、アメリカに何度か行ったことや、マックス・ニューマン、タニー暗号、コロッサスなどについては一切触れられず。フィクションの部分も多かったと思うのですが、実はこうだったら面白いのになぁ、という「もしも」の世界がうまく描かれているなと感じました。
逆に、本の内容はフィクション要素が一切無く、客観的事実をベースにしてチューリングの生涯を追った伝記なのですが、チューリング研究家ならではの「チューリング世界一ぃ」的な信仰(?)が若干気になるといえば気になるかもしれません。ただ、聞きなれない用語や登場人物が多くて、なかなか読むのに苦労しました。
私のように事前知識ほぼゼロで読み始めるよりも、簡単な情報をインプットしてから読む方がよいかもしれません。ということで、(巻末にも詳しいものが載せられているのですが)チューリングの簡単な年表をまとめてみました。
ご参考までに。
チューリング年表
年 | 出来事 |
1912年6月23日 | アラン・チューリング、ロンドンのパディントンで生まれる |
1914年~18年 | 第一次世界大戦 |
1936年 | チューリング、「チューリング・マシン」提唱 |
1938年~39年 | チューリング、エニグマ暗号解読を開始 |
1939年9月3日 | 第二次世界大戦が開始 |
1941年 | チューリング、ジョーン・クラークと婚約するも破談 |
1942年 | チューリング、タニー暗号解読を開始 |
1943年 | チューリング、電子工学を学ぶ |
1944年 | フラワーズによる世界初の電子式大型コンピュータ「コロッサス」がイギリスで稼動 |
1945年5月8日 | ドイツが降伏 |
1946年 | モークリーとエッカートによる世界初の汎用電子式コンピュータ「ENIAC」がアメリカで公開 |
1950年 | チューリング、「チューリング・テスト(イミテーション・ゲーム)」提唱 |
1952年 | チューリング、ホモセクシュアルを理由に逮捕され、裁判 |
1954年6月7日 | チューリング、青酸中毒で死亡 |
(巻末の「年表 チューリングの障害と関連する出来事」より抜粋し、少し加筆修正)