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「Ed Tech 新しい学びのシンポジウム 第一回」に参加してきました

「EdTechベンチャー×既存教育大手の協業は成功するのか!? ~EdTech系のこれからの勝ちパターンはこれだ~」 以来、一ヶ月ぶりの教育系勉強会でした。


「Ed Tech 新しい学びのシンポジウム 第一回」(2013.12.16)


会場は目黒雅叙園だったのですが、駅からの道を間違えて会場の周りをぐるっと一周してしまい、5分の遅刻。冒頭のベネッセ 森安氏の挨拶を聞きそびれてしまいました。

タブレット学習に関する実証実験結果の話題を中心に、新しいテクノロジーで教育はどう変わっていくか?どう変えていけばいいのか?について、発表とディスカッションを交えながら進行していきました。

第1章 タブレットと新しい学び

小6大規模実証実験<「進研ゼミ」タブレット実験版>報告

中垣 眞紀氏(ベネッセ教育総合研究所)

  • タブレットと子どものやる気について
  • 子供の学習(利用率をアップさせる)には、演出やゲーミングがある程度必要
    • アバターや壁紙に交換できるコイン、ガンバ(SNSの応援)
  • タブレット学習の魅力
    • すぐに正誤判定が出る
    • ピンポンが楽しい
    • スピード感、サクサク進む
    • デメリットも(漢字は書かないと身に付かない、等)
  • 満足度は半分くらい
  • 親御さんはやや(タブレットよりも)紙媒体のチャレンジの方がいいと感じているというアンケート結果も?

これからの教材作りとEdTech

渡辺 雅之氏(Quipper)

  • Quipper, GAKUMO, Straight Ace等の学習アプリを提供
    • 850万ダウンロード
  • 学習教材をいかに簡単に作るか
  • QCC(Quipper Creation Center), Qlink といったオーサリングツールを提供
  • ベネッセと共同実習実験を設計・実施
    • コンテンツ製作システム(つくる)、生徒側タブレット専用アプリ(まなぶ)、親サイト(みまもる
    • 数百人を対象にA/Bテストを実施
    • 同時に7つのスプリット
  • デジタル教材の学習教材製作はどうあるべきか?
    • 「個別に作るとキリがないが、高品質でぴったりなものでないと使われない」
    • 利用環境(オケージョン)の差、コンテンツタイプの差、年齢、学力などの状況によって「ぴったり」にバラエティが出てしまう
  • 世界中でベストなコンテンツの在り方については、今後も注力して研究

「進研ゼミ」タブレット実験版とenchantMOONにおけるハードウェア、手書きソフトウェアの取り組み紹介

辻 秀美氏(株式会社ユビキタスエンターテインメント

  • enchantMOONの販売
  • 手書き+デジタル
    • アナログからのスムーズな移行。紙ではできなかった機能
  • NO UI
    • 書くことに集中させるUI
  • "enchant" Command
    • 空白のページで丸書いて「カメラ」とか、直感的な楽しい機能を提供
  • Hyperlink, Programming
  • 「進研ゼミ」タブレットでは、なめらかな書き心地を提供
  • 「できた!」という感動、つくる喜び、楽しさをもっと

タブレットの学習効果について

赤堀 侃司氏(白鴎大学教育学部長・教授、東京工業大学名誉教授)

  • タブレットと紙の学習では、それぞれに特徴がある
  • 紙は飽きやすい
  • 紙は与えられた条件の中で頑張る子ども(優等生)には非常に優れたメディア
  • タブレットは写真・映像系には優れている。イメージが湧きやすい
  • 両者のテストの成績はだいたい同じだということだが、その中身は違う

まとめ

  • 紙は文章などの記憶・理解に効果的
  • 限られた範囲の内容理解では、紙が有効
  • 自分の意見など発展的に考えるにはタブレットが効果的
  • 学習したという実感性は、紙が効果的
  • もう一度やりたいという動機付けには、タブレットが有効
  • 紙の鉛筆、タブレットの指・タッチペンは触れるのが重要
  • 併用して使っていくのが肝要ではないか

パネルディスカッション「タブレットと新しい学び」

  • スマホの世帯普及率 50%、タブレット 15%


Q. 実証実験のアンケートでネガティブな意見もあったが、子どもと親のギャップを今後どう改善していけばよいか?(佐藤)

  • 触ると反応があるのが楽しい子どもが多い。親は「勉強とは紙に書くもの。本を読むのが一番」という固定観念がある。
  • 目が悪くなるというというのを気にしている人も。
  • 「ウチの子はこっちの方がいい」
  • 楽しく使えて、変な方に行かない(結果が付いてくる)と、親御さんも安心する(中垣)


Q. 実際、ゲーミフィケーションの仕組みは学習効果に繋がっているのか?

  • 実験から判断するに、悪影響はほとんど見られなかった。
  • そもそもサービスは、本当に学力が上がるか、継続できるかの二つをきっちり提供できるかに収斂されていくと思う。
  • タブレットは続きやすいと思う。電源入れるのが楽しい。いろんな学習タイミングで続けることができる。(渡辺)


Q. スタートアップ企業と大企業の文化の違いは? ここは大変だったとか。

  • 千人単位、何ヶ月も実証実験できたのはすごく良かった。諸手を上げてやりたかった。
  • ストレスを感じることはなかった。現場に権限が与えられていたことも大きかったと思う。毎回バシバシ決まっていく。森安部長のおかげ
  • お互いがどういうチームになるのかをきちんと定義していく(どういうチームにするか)のが重要(渡辺)


Q. 小学校でいまだに「鉛筆」が必須になっているなど、現場サイドにはまだまだデジタルへの壁が感じられることが多いが、デジタルの良さを現場に伝えるには?

  • 驚き・ワクワクを見せてあげたらいい。「かっこいい(から使いたい)」というのは子どもには重要なモチベーションになるかも。
  • それぞれの利点をうまく示せれば。(辻)


Q. テクノロジーのスピードに学校現場の仕組みが追いついてないのでは?

  • 岡山の小学校では単純だが楽しく授業していた。
  • 親の懸念は確かにあると思うが、どんな子どもも楽しく勉強する権利がある。いかに楽しく勉強させるか。楽しいデバイスや楽しいものに触れさせてやればいいんじゃないか。(赤堀)
  • 「楽しく学んで何が悪い」ということか。(佐藤)

第2章 テクノロジーで広がる子どもの体験

『進研ゼミ中学講座』中学1年生の16万人が使う<Challenge Tablet>:自宅で塾体験(ライブ授業)

小野 祐輝氏(ベネッセ)

  • 16万人が利用している授業の映像配信
  • 中学講座は全国で73万人が利用(5人に1人)
  • 1授業の最大視聴者数は3万8千人
  • タブレット無しと比べた教材活用率は、2.7倍
  • 視聴者評価「満足した」は90%以上
    • 「同時にたくさんの仲間と授業を受けるのがモチベーションの向上につながる」
    • 「自宅で一目を気にせず勉強できる」
  • 「双方向」と「一体感」が活用向上のキーワード
  • 双方向
    • アンサーボタンで授業の内容を変更する
    • ひとことメッセージ
  • 一体感
    • キーワード同時発生
    • テストなどのイベント同時とりくみ
  • 中学生が主体的にに学ぶことを大切に

新しい読書体験「ブクフレ」

高橋 淳氏(ベネッセ)

  • 小学生は10冊、中学生は4冊/月くらい本を読んでいる
  • 米国では70%の親がebookを贈りたいと考えている等、媒体に関する考え方にも変化が
  • 新しいソーシャルリーディングに向けたR&Dとしての「ブクフレ」
  • 安心安全を第一に。「親子モード」が入っている。リクエスト機能
  • 充実のラインナップ
  • 新しい読書体験を
    • 気持ちボタン、読みともネットワーク(読書の好みが近い人を探す)、メダル
  • 新規性というのが功を奏してか、「読書量は増えた」という結果も(ただし、研究段階)

パネルディスカッション「テクノロジーで広がる子どもの体験」

Q. 読書と言えば紙だったと思うが、文章を提供する作家側として環境の変化は?

  • これからだと思う。紙だろうが何だろうが、読んでくれる人が読みたいと思うものを書くしかないので(デバイスには)あまり関係はない。
  • 本、読書はデジタルを超えたもの。デバイスは入り口に過ぎない。その先に素敵な広間がある。デジタル化で間口が広がってくれれば、書き手、送り手、子どもたちに取っても幸せだと思う。
  • そこから生じる問題に、大人が気を付けないといけないだろうが。
  • 特に、過程の環境によって読書の格差が広がらないようにしてほしい。(あさの)


Q. ハリーポッターのebookでは絵が動くなど、本にも進化が出てきているが?

  • 本の本当にいい意味は、個人にとってのもの。全体的なものではない。それぞれの想像が働く余地があるところが重要。映像化してしまうことで想像力が浸食されて画一化されはしないか?が懸念(あさの)


Q. 原稿はどのように書かれている?

  • PCで書いている。自分の文体にリズムが合っているから。
  • ただし、ゲラを直す作業だけは紙で赤入れをしている。書くときはPCで、直すときは紙で。(あさの)
  • 街の本屋さんを大事にしたいので、紙の本しか出さないという作家さんもいる。(武内)


Q. 中学講座はライブ中継に3万人?

  • 録画と合わせて。ライブだと1万5千人だとか。(小野)
  • 本家MOOCsの聴講者数と同じ? MOOCsと言ってもいいのでは?(佐藤)


Q. 学習の履歴をどう置いておくか?

  • 個々の履歴でどういう成長に繋がったかは重要だが、アーカイブの分析はこれから。(小野)
  • ユーザの行動データも取っている?(佐藤)
  • もちろん。どこまで細かくやるかは試行錯誤している。(小野)


Q. ソーシャルリーディングにおける新しいコミュニケーションの可能性は?

  • 読む環境が広がるきっかけになると考えている。自分と好みが近い人と近づけるというのも可能性を秘めている。(高橋)


Q. 電子書籍の読書体験を実際の教育の本丸に入れていくにはどうすれば?

  • 昔は戦争コミュニティ、一昔前はクラス、部活というコミュニティがあったが、最近は現実と別のコミュニティが出てきている。
  • それをいかに正しく使っていくかが現代の問題になっている
  • ライブ授業のコミュニティは対面のコミュニティとどのような関係があるか?
  • 対面であれ、遠隔や映像であれ、プレゼンスの高い先生には敵わない。
  • 多様な世界を経験する世界になってきている。
  • 表現媒体はいろんな媒体があって、それぞれの楽しみ方がある。
  • 今後はCBTになる。紙でできるテスト、コンピュータでできるテスト、多様化が出てくる。我々はリテラシーを持たなければ。(赤堀)

第3章 これからの子どもに広がる可能性

Q. 子どもの生きる力にデジタルがどのような影響を及ぼすか?

  • いろんな学生のタイプがあるが、夢がない。夢を持たせたい。いろんな道具を使って、クリエイティビティを世界に発信できるような教育をしたい。
  • 大人しく真面目に聞いているが、それだけ。新しいデバイスがもっと夢を持ち、夢を叶えられるようになれれば。(赤堀)
  • 子どもにはもっと本を読んでほしい。特に、偉人伝とかで生き方感を。(ベネッセホールディングス社長 福島)
  • コンピュータをどう扱うか。プログラミングの勉強にも力を入れてやっていきたい。
  • 人気が高いのが英語教室、理系の実験(サイエンス)教室も生きる力に繋がるかと。(福島)
  • 子どもたちが人の生き方を学ぶのが難しくなってきている。目に映る大人がいつも頭を下げている。「こういう大人になりたくないな」と思わせるのは生きる力を削ぐことになっているのではないか。無名の人でもいいが、生きた人々の偉人伝(考え方)を子どもたちには知ってほしい。(あさの)


Q. コンテンツの楽しみ方はデジタルでどう変わるか?

  • 最近特に若い人たちが「繋がらないことを恐れる」という観念に支配されている。そうではなく、「繋がりたい人と繋がる」のはすごく素敵なこと。新しい形じゃないかと。
  • より簡単な方法で楽しみ方が広がっていくんじゃないかと期待している。(あさの)


Q. デジタルをどのように活用していくか?

  • 通信教育はこれまで一対一が限界だったが、チームプレイ、グループ化をコーディネートしたり、今までできなかったことができるようになるのではないか。
    • 誰かが読んだ本についてディスカッションするとか。あるいは、スティーブジョブスはどんな本を読んで、どこに赤線を引いたのか?についてディスカッションしたり。(福島)
  • 秋田の八方町の小学校が最も学力が高いが、最もいいところに学校がある。コミュニティが学校を大事にしている。地域が先生を尊敬している。コミュニティが学力を育てる。学校を大切にしないコミュニティでは子どもは育たない。
  • 次の時代を生きるために必要なリテラシーを支えていかなければ、日本は伸びていかない。(赤堀)