今週月曜、IT系の知的財産勉強会があったので参加してきました。
「グローバルで生き抜く為の知的財産勉強会」(2012.7.9)
知的財産管理技能検定の翌日という奇遇もあり、「これは絶対行かねば!」と楽しみにしてました。
「ソーシャルゲームの法的リスク対策」というお題目でしたが、特許と著作権に焦点を合わせた、初心者向けながら基礎からしっかりとした知的財産権の勉強会でした。
後半駆け足だったので、全くの初心者にはちょっと難しかったかもしれません。
登壇者は、株式会社サピエンティストの下出一氏。
氏曰く、「知財はかなり使えるツール」とのこと。
「中小企業や個人こそ、知的財産を活かすことで、大企業や世界と戦っていけるツールとなり得る」という趣旨の話を聞き、今後の勉強に大いに勇気が湧いてきました。
全体を通してすごく面白かったのですが、中でも気になった話を中心に。
特許
- 課金システムやインタフェースも特許になり得る。
- 従業員の発明=会社が通常実施できる。一般的に特許権も会社に譲渡される。
- 「特許で大儲けできる」は誤解。
- 誰でも特許が取れるという触れ込みが多いが、やはり専門家に頼んだ方がよい。
- 特許費用は、事務所によって違うが30~50万円。
- 特許申請は国内で30万件/年。
- 特許の欠点は、取得までに時間がかかること。最低でも数ヶ月。だからゲームとはあまり馴染まない?
意匠
- 日本ではゲーム画面のデザインは対象外。米国では「デザイン特許」として認められている。
- 意匠権でも縛り方によっては、特許のような強力な独占権を発揮することも可能。
商標
- 大体半年くらいで申請が通る。
著作権
- ベルヌ条約はほとんどの国が加入している。
- 存続期間等の条件は国により違うが、日本は戦時加算のペナルティを負っている。
- 「(c)」は必須ではないが、あった方がよい。
- 「All rights reserved.」にはあまり実質的な効果はない。年号も効果の範囲を狭めるので、これもあまり意味はない。
- 著作権が譲渡されても、著作者人格権は著作者に残り続ける。
- 職務著作の場合は、著作権は通常、会社にいく。
- 外注先に開発を委託した場合は、きちんと契約を。
×「すべての著作権を譲渡する」
○「すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」
×の例では全ての権利は譲渡されないので、○のように書いておくべき。かつ、「著作者人格権は行使しない」旨の表記もおこなっておいた方がよい。これがあるか無いかで、モメたときに重要な意味を持つ。
紹介していただいたリンク
下出氏が紹介していたリンクを調べてみました。
① 特許検索ガイドブック ~電子ゲーム~
(特許庁 平成16年度公表分野より)
特許庁が公開している、ゲームの特許に関する調査資料です。
P.16からの「(3) 参考となる広報」が特に面白いです!
特許の存続期間は出願から20年なので特許切れのものも多いのですが、「へー」という感じでゲーム業界の特許の歴史が掴めます。
例えば、
9)特許第1676795号 復活の呪文(パスワード)(ナムコ)
特願昭61-010260号「業務用ビデオゲーム機」
「リターンオブイシター(イシターの復活?)」1988
RPG等でいったん中断したところから再スタートできるように、ゲーム進行状況データをパスワードに変換し、再スタート時には、入力装置より該パスワードを入力することで、ゲーム中断時の状況データを復元し、継続プレー可能とする。
(引用:特許検索ガイドブック ~電子ゲーム~)
最近めっきり姿を消したパスワード機能の特許は、ナムコが持ってたんですね。でも「業務用ビデオゲーム機」とあるので、家庭用のゲーム機までにはその効果範囲は及んでいなかったのでしょうか。
② パテントサロン 特許・知的財産情報サイト
懇親会のときに、下出氏から「知財に興味あるなら、日々ニュースが更新されているから見てみたら?」と教えていただいたサイトです。
早速、メルマガに登録しておきました。
まとめ
講演の内容については、知的財産権に関する基礎の基礎が網羅されており、後半は駆け足でやや難しめでしたが、知的財産管理技能検定の翌日というタイミングもあって知識が詰まった状態で聞けたので、個人的には内容もよく理解できたし、知的財産権への理解をさらに深めることもできました。
IT系の知財セミナーに参加するのは初めてで、そもそも知財に関するセミナー自体が珍しいなと思っていたのですが、懇親会のときに近くにいた知財関連の仕事をされている方に伺ったところ、「知財に関わる人はその職務の性格から、あまり外に出て行って話をしたりしない。企業が囲い込むから、人材もあまり流動的にならない」とのことでした。なるほど。
企業の知的財産を考えることは、これからの企業戦略の中でも大きな地位を占めてくるのかな、とこの分野の将来を感じました。